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少し前の雑誌になりますが、文藝春秋11月号に「トランプは米国の異端ではない」と題するジャーナリストの山口敬之氏の特集記事が載っていて、その中に安倍総理の本音と山口氏が考えることが書いてあり、興味深く読んだので一部を引用します。
(前文省略)
安倍は「岸信介証言録」を少なくとも七回読破しているという。
祖父岸信介の反骨は、安倍のアメリカ観に少なからぬ影響を与えている。
だから、安倍はトランプを「異端児」として捉えるよりも、建国以来の「独善的体質」を浮き彫りにした、いわばアメリカの本流の発露の一つだと見ているのである。
安部の対米認識の通奏低音をなすアメリカの独善体質とは、どこに源流があるのか。
その答えは大統領を生み出し続けてきた「アメリカ貴族」ともいうべき支配階層の系譜に隠れている。
欧米の歴史教育では「近代アメリカ史」は17世紀のメイフラワー号を始めとするプロテスタント移民に始まる。
しかし、古来アメリカの大地には、狩猟や農耕を営む様々な部族が各地に点在していたのである。当時の先住民の人口は1000万人にも上るという推計もある。
アメリカ大陸の東海岸に陣取った欧州からの移民は、西に勢力を拡大させていく過程で、先住民の土地を奪い、虐殺し、強制移住させた。
当時の政府が「鉄道を敷設すると線路両側の土地も取得できる」とする法律を成立させたことが、事態の悪化に拍車をかけた。鉄道会社は猛然と線路を建設し、自前の軍隊を同行させて先住民を問答無用に虐殺し、土地を奪っていったのである。(中略)
鉄道資本に源流をもつ企業家はその後、鉄鋼、石油、金融、軍需、情報通信といった基幹産業へと進出し現在も、アメリカ社会を支配している。
先住民を躊躇なく虐殺した鉄道資本こそが、アメリカの支配階層の源流であることを、安倍は熟知している。(中略)
安部はこう言った。
「アメリカの大地でインディアンは虐殺され、強制移住させられた。その後その大地で日系人は強制収容され、広島、長崎への原爆投下と東京大空襲で30万人もの無辜の市民が殺された。(中略)
オサリバンの選民思想
1776年のアメリカ独立宣言でトマス・ジェファソンはこう言った。
「すべての人は平等に作られ、造化の神によって一定の譲ることのできない権利を与えられていること。その中には生命・自由、そして幸福の追求がふくまれていること」
アメリカ人にとって「全ての人」の中に先住民が含まれていなかったことは、歴史が明確に示している。
そしてこの、傍らから見れば明らかに自己矛盾する論理が、19世紀半ばにジャーナリストのジョン・オサリバンが提唱した「マニフェスト・デスティニー」だ。
「アメリカ人は神から選ばれた存在であり、この大陸全体に広がって周辺の劣悪な民族を教化するのは神から与えられた使命である」というオサリバンの選民思想は、アメリカの国益追求の行動を思想的に支えた。そして、幾人ものアメリカ大統領に、多民族容赦ない虐待政策を選択させた。
広島、長崎への原爆投下や東京大空襲、ベトナム戦争における枯葉剤の使用、捏造された根拠に基づいて始められたイラク戦争・・・・。
今、トランプがメキシコ国境への壁建設やイスラム移民排斥を唱え、これを一部の白人層が熱狂的に支持している構造は、実は決して異端ではない。
(以下省略)
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