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鳥羽のホテル
伊勢からバスで二見が浦を経由して、鳥羽の観光ホテルに宿泊した。
断崖の岩の斜面に立てられたホテルは、入り口のロビーが5階。
広いロビーからの鳥羽湾の眺めは素晴らしく、ロビーで海を眺めながら無料のワインを飲めるというのも旅の醍醐味であろう。
斜面に立てられているので1階の温泉大浴場や露天風呂からも海が眺められた。
食事は朝晩ともヴァイキング形式で品数の多さには驚いた。
近海の魚はもとよりイセエビまで出る豪華さだった。ステーキも出た。
ここまでは観光ホテルとして申し分のないものであった。が、その後旅行で今までにないハプニングに見舞われた。
ホテルといってもシティーホテルと違い、田舎の観光ホテルは部屋は和室になっていて、1部屋3人収容で、私たちは2部屋を借りた。
温泉に入り、食事を済ませた私たちは、一方の部屋に集まりいつもの通り、酒を飲みながら歓談した。
部屋は暑い。その上アルコールが入ったので暑さは倍増したので、暫く窓を開けることにした。
そして、夜は更けていき、窓を閉めて予め敷いてあった布団に入って就寝した。
この季節にしたら部屋の中は暑かったので、一旦緩めのクーラーをつけたが、風邪を引いたらいけないので、途中で消すことにした。
どのくらい寝たであろうか。
隣で寝ている人が両手でパチン、暫くしてまたパチンと手を叩き出した。
何をしているのだろうと思っていたら、私の顔の廻りにブーンとうるさくまとわりつくものが飛んでいた。
痒い!
それからは電気をつけ二人でそのものを探すことにした。
それはすぐに見つかったが、蚊は動きが素早いので中々捕らえられない。
そうこうするうちに、私は畳に這い回る小昆虫を見つけた。
最初ノミだと思って慎重に狙いを定め、今や武器となった指をノミに向かって素早く持って行ったら、何の抵抗もなくサッと潰すことが出来た。
畳には血がにじんでいる。
「これはこの昆虫の血ではない!わたしの血だ!」
目を凝らしていると、こんどは先ほどのものとは比較にならぬくらい微小なものが直線状に動いている。それを潰したらまたしても血だ!
私は恐ろしくなり、布団をはいでみた。
そしたら今度は最初のものよりさらに大きな真っ赤に膨らんだ虫が布団にへばり付いていた。
まったく動かない。
再度指で潰したら、今度は夥しい血がシーツを濡らした。
シーツに滲んだ血を見ながら、私はダニの仲間だということを直感した。
腕にはダニの特徴である二か所の赤い斑点が出来ている。
隣で寝ている和歌山の人は蚊の被害だけかと思ったら、枕をひっくり返したらそこに大きな虫がいて、やはり腹いっぱいになるほどの血を吸っていた。
3人のうち、もう一人の京都の人は、いびきをかくかもしれないということで、自主的に端っこに離れて寝ていたので、そこまでは被害がなかったようだ。
隣の部屋で寝ていた人たちも何事もなく朝を迎えたということだった。
こういう出来事はもちろん初めてであった。
松阪牛
翌日はあいにくの雨。
鳥羽湾を船で周遊し、水族館でジュゴンやセイウチなど珍しい海の生き物を見て松阪に向かった。
松阪牛は神戸牛と並んで、全国に知れ渡るブランドだ。
今回お邪魔したのは「一升瓶」という老舗の焼肉屋だ。
松坂の店は客扱いが悪く、しかも高いという良くない評判が立っているが、この店は客の応対もよく、肉も柔らかくてジューシーでしかもボリュームもあるといった満足できる店だった。(終わり)
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