地球温暖化−将来への対策(10)
投稿者:風鈴 投稿日:2010年 2月26日(金)
C) ブラジルの主なエネルギー源
ブラジルは世界で10番目のエネルギー消費国である、とウィキペディアの「ブラジルのエネルギー政策」
http://en.wikipedia.org/wiki/Energy_policy_of_Brazil にありました。
世界エネルギー消費国家の一覧表となると、仲々ありません。国別一人当たり(per capita)の消費量はあり
ますが、人口を掛け算しなければならなく、何十国となると無理で、それに石炭、石油、天然ガスなどの単位が
各々違い、石炭はトン、石油はバレル、天然ガスは立方メートル、液体燃料はガロンかリットル、それに変換
された電力はワットという具合にバラバラで、全部をエネルギーのジュール(joule)の単位にすると一貫
しますが、ジュールに変換するには、全ての加工や変換過程での効率計算がないと不正確なので、極端に
複雑になります。
そこで「エネルギー消費国家の一覧表」は諦め、ブラジルが世界で10番目に大きい消費国だと賛成しましょう。
世界の主要国は未だ圧倒的に化石燃料に依存なので、先日(1月17日)のCO2放出量が多いDirty Dozen、
汚い1ダースの国:中国、アメリカ、EU連盟、ロシア、ブラジル、インド、日本、ドイツ、カナダ、イギリス、
イタリア、オーストラリアがエネルギー消費の高い国と言えるでしょう。
ブラジルのエタノールの話題の前に、国全体の主要エネルギー源を見る為に上記のウィキペディア、
それに少し新しいアメリカのEIAの http://www.eia.doe.gov/emeu/cabs/Brazil/Background.html のデータを
引用します。ブラジルは発展が目覚しく毎年変わるので、両者に多少の違いがあります。
下の最初の円グラフはEIAからで、上はブラジルの総エネルギー消費の割合を示し、比較の為に日本のデータも
下にあります。日本は石油、天然ガス、石炭等のCO2放出燃料がが83%、原子力13%、水力3%、再生可能が
1%、アメリカでは「原子力も再生可能エネルギーに入れるべきだ」という人もいるようですが、
どうも抵抗感があります。
ブラジルのグラフで赤の部分が石油ですが、EIAはこの部分にエタノールを含んでいる、と言ってます。
ブラジルでは100%のガソリンは使ってなく、ガソリンと言うと最小限20%のエタノールが混入されていて、
最近フレックス車が増えているので、E85(エタノール85%)も多いし、石油49%の最低20%以上は
エタノール、そこで全体の10%以上は再生可能エネルギー(Renewable)のエタノールであろうと
憶測します。
このグラフの Renewables の定義は誤りで、ブラジルの再生可能エネルギー源は、
水力発電36%+エタノール10%以上+他2%=48%以上となり、世界でもトップの国の一つでしょう。
主要エネルギー源の石油、天然ガス、水力発電については次のようにありました。
石油
世界で15番目に大きい石油生産。1997年までに国営 Petrobras(Petróleo Brasileiro)で独占、
今は50以上の民間会社もあるが、国際的な規模は Petrobrasだけで2008年には1日240万バレルを生産、
年間6%で増加中で、2009年には自国消費量と生産量が同じ位になると予測されている。
南アメリカではヴェネゼラに次いで多量な112億バレルの埋蔵量があり、6千キロのパイプラインもあり、
リオの沖300−450キロの海底(水面から5−6キロの深さ)に膨大な石油・天然ガスがあると最近分り、
ブラジルは世界でも最も石油生産が多い国の一つになりつつある。**
**この油田については2月17日「速度制限なし」の記事を参照下さい。
日本の1日の石油消費が535万バレルで、ブラジルの石油生産量を全部買っても45%にしかならないとは、
日本が如何に多量の石油を使っているか分り、中近東に依存度が高いだけに恐ろしいとも言えます。
天然ガス
石油と一緒に出る副産物で、現在の総生産は約4千4百億立方メートル、運送手段が欠けていること、国内では
ガスの値段が安いので生産が遅れていましたが、近年に石油の値段が上がり、急にガス需要が増えました。
今まで確認された埋蔵量は3060億立方メートルで、海底にはそれより楽に15倍以上あると見積もられ、
Petrobrasが4千キロのパイプラインを所有、地方のパイプラインと相互に繋がってないので広範囲に供給でき
なく、ボリビアとアルジェンチンから輸入しています。
土地の名前がピンとこないので、下のブラジルの地図に、パイプラインがある地域に赤い丸をつけてみました。
リオの南方に膨大な石油と一緒に天然ガスもあると確認され、リオから供給網パイプラインを拡張中です。
中国の会社が請負でリオから地図の右上のバーヒァ(Bahia、サルヴァドル市)まで約1400キロを
2007年に建設開始で、今年に完了予定。もう一つは左上に大きな楕円形のついたアマゾナス
(Amazonas)地域のウルク(Urucu)に陸上ではブラジル最大のガス埋蔵があるので、Urucu-Coari-Manaus
(マナウスは地域の首都)まで670キロのパイプラインが昨年終了の予定。天然ガスでの発電を増加しているので、
前はボリビアから輸入でしたが、ボリビアが国有化を始め、現在は政治的に良い関係でなく、需要が増える一方で
余計に自国供給網が必要になったみたいです。
電力発電
水力発電は世界で中国、カナダに次いで世界3番目の水力発電量で国内消費電力の83%を占める。水力発電の
割合が一番高いのはノルウェーで100%近く、多分ブラジルがその次でしょう。平地が少ない日本で水力発電の
割合が3%とは少なくて不思議ですが、これは別に調べてみましょう。
世界で2番目に大きいイタイプ(Itaipu)ダムはパラグァイと共有で、700メガワットの発電機を20基装置で
合計14ギガワット、これは日本の大きい原子力発電機の13基に相応し、ブラジルの総電力発電は日本の37%
くらいの発電量です。
巨大な水力発電があるので羨ましいみたいですが、何せ広い国なので送電線への投資が十分でなく、
電力許容が余分にある発電所から送電出来ないのが問題です。2000年に、雨が降らなかったので、
予備の発電所を使ったら益々ダムの水量が減り、2001年には電力使用を制限して消費割り当てをしました。
それに懲りてガスでの発電を増やしている最中ですが、ガスの供給網が十分でなくて、ブラジルは現在拡張計画が
多いので急な成長の歪みを経験しているようです。
下のグラフは http://www.geni.org/globalenergy/library/energy-issues/brazil/index.shtml からで
電力増加を示し、紺の水力発電が圧倒的、2001年の電力不足や緑のガス発電が増えつつあるのが見えます。
電力送電についてブラジルにある特殊な問題は、送電線ロスが14%です。 これは発電所から100ワットを
送電したのに、途中で電力をロスして家では86ワットしか出ないということで、ブラジルでは発電所から
消費都市までの距離が長いのでロスが大きいらしく、OECD の国は典型的に7%くらい、多分日本では
同じくらいかそれ以下でしょう。