地球温暖化−将来への対策(3)
投稿者:風鈴 投稿日:2010年 2月 5日(金)
不可解な政策
数日前NHKオンラインに次のような記事がありました。
『25%削減で3案提示 検討へ 2月3日
温室効果ガスの25%削減を達成するため、政府は3日、会合を開き、環境省が省エネなどの国内対策で15%から
25%の削減を目指す3つの案を示し、今後、必要な具体策やコスト、経済効果について検討していくことに
なりました。
国会内で行われた3日の会合には、仙谷国家戦略・行政刷新担当大臣をはじめ関係省庁の副大臣らが出席し、
日本が国連に提出した温室効果ガスを2020年までに1990年と比べて25%削減する中期目標を達成する
ための対策を検討しました。この中で小沢環境大臣は、25%のうち、省エネなど国内対策で削減する割合を
15%、20%、25%の3つのケースを想定し、残りは海外から排出枠を購入することなどで賄うという案が
示されました。
3つのケースを部門別に見るとそれぞれの削減率は、産業部門が17%から24%、オフィスや店舗が4%から
20%、家庭部門が18%から30%と、産業部門に比べて排出量が増えている家庭部門の削減の割合が大きく
なっています。
また、目標を達成するための具体策として、太陽光発電やハイブリッド車をどれくらい普及させる必要があるかや、
家計へのコスト、それに経済効果などを検討し、来月にも取りまとめることになりました。
会合のあと、小沢環境大臣は「各省庁からそれぞれが所管する政策を盛り込んでほしいという話があり、
そうした政策を大いに取り込みながら、きょう出た意見の論点整理をしていきたい」と述べました。
温室効果ガスの25%削減に向けた関係省庁の副大臣の会合の中で、小沢環境大臣が示した事務局案について、
経済産業省の増子副大臣は「きょう出された案はまだ、ほとんど煮詰まっていない。
環境と経済を両立できるような制度設計を行うことがわれわれの責任だと思っているが、今のところ、かなり
ずれている。
今後、経済産業省としての考え方を出していきたい」と述べました。』
報道の全てを信じるのは危険ですが、政府の頭脳である、国家戦略『行政刷新』大臣と関係省の副大臣が集まった
こと、会議からの結論が「以上のようであった」は事実でしょう。そこで又分らんことが増えてしまいました。
『削減する割合を15%、20%、25%の3つのケースを想定し』とは本気で25%削減目指すつもりなので
しょうか。
自民党の公約が8%で、民主党の公約が25%だったのですが、今度は新しく3段階が出て来ました。
公約には全力を尽くし達成する努力があるべきでしょうが、やる前に「やれない計画」があるとは何の意味で
しょうか。
「やれない」と知っていたので「やる気がない」のか、誰も質問していないようです。
『産業部門24%、オフィス・店舗が20%、家庭部門30%削減』は一体何の具体的データから出たので
しょうか。
環境大臣は「何がCO2放出源か」の詳細なデータに元ずいて削減の割合を出したのでしょうか。
下のグラフは経済産業省(エネルギー庁)からで、これまで数回引用しました。
経済産業省の副大臣の「きょう出された案はまだ、ほとんど煮詰まっていない」は当然で、国家戦略会議以前に
具体的なデータを山ほど持っているエネルギー庁や専門家と、綿密な調査と懇談をしなかったのでしょうか。
このグラフから分るのは1970年以来(1990年度から約25%削減レベル)増加しているのは
1.発電所(特に火力発電所) 2.運輸 3.民生 で産業と自家消費は全く増加していません。
それなのに『産業24%、家庭30%削減』は全く方向違いで意味がありません。産業は40年間効率向上に
努力し削減して来たので増加がなく、それ以上24%削減は無理みたいです。家庭の電力消費は間接的に発電量に
影響しますが、30%削減は先ず不可能、それに家庭の消費は総エネルギーの10%に満たないはずです。
そこで不可能な30%を削減しても全体の3%、『オフィス・店舗が20%削減』は大幅に営業時間帯を変えないと
不可能で、それに事実上CO2放出源ではありません。そこで発表された削減は全く方向違いだと言います。
『太陽光発電やハイブリッド車をどれくらい普及させる必要があるか』について、再びブヨン・ロムボーグ教授の
記事の引用になりますが、8%削減するには科学技術政策研究所のロジャー・ピールク教授の計算によると
『新しい原子力発電所を9ヶ所、百万の風力発電機を建設し、ソラーパネルを3百万の家屋に設置し、
新しく建てる家の絶縁材を2倍にして、グリーン車の購入の割合を4%から50%に上げなければならない。』
とありました。同じような計算が何処かの研究所か大学かにあるはずで、どうして専門家との相談がないので
しょうか。
太陽光発電やハイブリッド車を強力な義務で狂ったみたいに普及させても25%削減になりません。
それはスウェーデンが5年前から思い切った政策を取り、昨年度に12%削減した範例から言えます。
最大のCO2放出源、火力発電所をガスのコジェネレイションに変える、現在のガソリン消費量を20%以上
削減しないと公約の25%削減どころか、10%削減(現在から17%くらい削減)さえも不可能と
言えるでしょう。
つまり15%以上の目的不達成の罰金、ドイツ銀行の計算によると2兆円以上を『海外から排出枠を購入』となり、
このような国際的協定は政府が変わっても義務は変わらず、日本は払い続けることになります。
苦境に立つと真の姿が出るもので幹事長も醜くなってきました。政治家は印象が全てで、多くの人が指導者としては
信用出来ないと判断すると、如何に幹事長の席にへばりついても、国の為に全然良くないのが分らんのでしょうか。
幹事長の資金問題、朝青龍の引退、トヨタのリコールなどで、マスコミはニュースの種が切れなくて良いので
しょうが、もっと皆に大きく影響がある問題は、経済産業省の副大臣発言の「ほとんど煮詰まっていない」という
よりも「10%でも削減出来る、具体的な将来への対策は未だ全く無い」不可解な政策です。
お陰様で将来に無意味な歳出が増えて、将来の世代の財布を軽くしていきます。
気分が悪くなる話しばかりで、どうも申し訳ありません。